大判例

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大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)5611号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(六) 将来の逸失利益

原告花子の顔面に著しい醜状を呈する程度の傷痕が残るに至つたことはさきに認定したとおりであるところ、同原告は、これにより労働能力の低下を来し損害を被るに至つている旨主張するので、以下この点について検討する。

原告花子の前記顔面における傷痕それ自体は、一般的にいつて、同原告の知的肉体的活動に対し何の制約をも加えるものではないと考えられるから、これにより同原告の労働能力が低下するに至つていると認めることは困難である。

もつとも、右傷痕の故に、原告花子においてモデル、俳優等の職に就くことができなくなつたであろうことは同原告指摘のとおりであろうし、また、水商売、小売店の売子等の職に就いた場合、同原告指摘のように支障を受けることはあるかもしれない。しかしながら、<証拠>によれば、原告花子は、出生前父と死別し、出生後兄とともに母である原告アヤ子によつて育てられ、昭和四三年三月高等学校を卒業すると直ちに株式会社内外電気製作所に事務員として勤め、原告アヤ子ともどもひたすら将来の幸福な結婚生活を夢みていたこと、本件事故後は右会社を辞め、はじめ会計事務所に事務員として勤め、現在は別の会社の事務員として、本件事故前に比して遜色のない給料を得ていることがそれぞれ認められ、これよりすれば、原告花子において過去においてモデル、俳優、あるいは、水商売、小売商の売子等の接客業に就くことを志していたことがあつたこと、あるいは、本件事故にさえ会わなければ将来右のような職業に就くことを志すに至るであろうことを肯定するに足りる形跡は見当らないのであるから、目下同原告においてその顔面における傷痕の故に職業の選択、職務の遂行等に関し具体的に不利益を被るに至つているものとは認め難い。なお、かりに原告花子において永い将来のうちにはどうしても前掲のような接客業に従事しなければならないような事態に遭遇するかもしれないとしても、同原告の顔面における傷痕は、前記のように著しい醜状を呈するものであるとはいえ、見る者に対し、異様、怪奇、不快等の念を抱かせる性質のものではないのであるから、この場合に甘受しなければならない支障の程度も、かりにそれがあるとしても、しれたものであり、同原告に対し格別の収入減を来すものとは考えられない。

以上の次第で、原告花子の顔面に傷痕を残すに至つた点は、同原告の労働能力に制限を加えるものとは理解し難く、本件においてこの点は慰藉料額の算定に際し考慮を払うべき事情に止るものといわなければならない。 (小酒礼)

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